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業態業種別-AIの導入活用事例-

最終更新日:2019/11/8

【インタビュー】EXest中林CEO 観光スポットから旅行者好みの穴場スポットをAIがレコメンド


【インタビュー】EXest中林CEO 観光スポットから旅行者好みの穴場スポットをAIがレコメンド

 

旅行、ホテル、飲食業界などの観光業において、訪日外国人観光客・インバウンド対策が急務と言われています。

日本政府観光局(JNTO)の調査では、2018年に日本を訪れた外国人観光客は3,000万人を突破したことが発表されました。(※1)

外国人観光客が増え集客競争が行われている中、いまAIによる観光スポットのレコメンドが注目を集めています。

旅行客の好みと観光スポットのデータを、AIの機能を使ってマッチングさせることで、日本全国さまざまな観光地への誘致の可能性が期待されています。

今回は、 訪日旅行客と日本を良く知るガイドのマッチングと、「明日何をしようか」と考えている旅行者が、日本全国の観光スポットやイベントなどを検索できるプラットフォーム 「WOW U」と、AIを活用し旅行者に適した観光スポットをレコメンドする 「 Konomy AI travel consultant (Konomy)」 を提供するEXest株式会社 代表取締役CEOの中林幸宏氏にお話を聞きました。

中林 幸宏  

EXest株式会社 代表取締役CEO

早稲田大学を卒業後、広島テレビに入局。スポーツディレクターを経て、大阪支社、東京支社で外勤営業。大手クライアントの広島における広告宣伝活動に携わる。2013年、早稲田大学ビジネススクールに在学中、日本初、テレビ局によるクラウドファンディング「テレビdeふぁんでぃんぐ広島」で新規事業を企画。2016年MBAを取得後に起業し、デジタルプロモーションの分野で事業会社の広告宣伝部のコンサルティング事業を行う。同年12月、EXest株式会社を設立し、訪日観光客とプロフェッショナルガイドとのマッチングプラットフォームを運営。2019年2月より、旅行者好みの観光スポットをレコメンドする「Konomy AI travel consultant(以下 Konomy)」を提供。

 

『アントレプレナーなら、何か産業を創れ』

――今の事業をはじめるきっかけについて教えてください。

――中林氏

「今の事業を始めたきっかけは、渡米先で出会った、ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー(当時)の西城洋志氏からの助言です。

ビジネススクールを卒業した後、起業するならシリコンバレーだと思い立った僕は、2016年に渡米しました。

彼はシリコンバレーで事業を行なっており、今もメンターとして大変お世話になっています」

 

当時、テレビ広告とデジタルマーケティングのコンサルティング事業で数千万円の売上があったという中林氏。

事業が上手くいく中で今の事業をはじめたのは、西城氏のある言葉でした。

 

――中林氏

「『お前が今やっていることは、スタートアップじゃなくてスモールビジネスだ。アントレプレナーなら、何か産業を創れ』。

一緒に食事をしていたある日、西城さんにそう言われたんですね。

コンサルティングは、お客様(クライアント)に満足してもらえたかもしれないけど、対消費者や対マーケットに対しては何も生み出していないという厳しいお言葉もいただきました。

西城さんから助言をいただいたあと、『なぜ起業しようと思ったのか』『自分が最も大事にしていることは何か』と、これまでの自分を見つめ直しました。

そんな中で『自分は人に恵まれた人生だった』ということに気がついたんですね。

そこで当時から、人と人とが繋がっていくビジネスができたらいいなと考えていました」

 

新しいビジネスのヒントとなったのは、広島テレビに勤めていた時代に、東京や大阪で出会った放送局の方たちとの経験でした。

 

Web検索しても見つからない店、常連だけが知っている裏メニューの「価値」

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――中林氏

「テレビ局で働いていたころ、日本で旅行に出かけるときには、その地域の放送局さんに連絡して、テレビ局を尋ねたり一緒に食事や飲みに連れて行ってもらうことがありました。

例えば、青森にいる放送局の先輩を食事に誘った時は、掘っ立て小屋のようなお店に連れて行ってもらいました。

そこは食べログにも載っていないようなお店で、常連しか知らない裏メニューや、今まで食べたことのないレアなメニューが出てきました。

また出張で沖縄に行った時も、現地で働いている放送局の先輩に『観光客が行かないような美味しいお店』がないかを訪ねると、直ぐにLINEでリストが送られてきたんですね。

人を介して、自分だけでは知ることができなかった情報を得たり、新しい出会いがあったりする体験はとても貴重です。そしてその時、属人的な情報には価値があるのではないかと考えました」

 

Web上では検索できないような属人的情報の価値が、これからますます上がってくると考えた中林氏は、新しいマッチングビジネスを考えます。

 

――中林氏

「はじめに、海外の観光客をテレビ局や新聞社のシニアの人とマッチングするビジネスを考えました。

しかし2016年の時点では、訪日客に有料で通訳ガイドできるのは国家資格を持つ『通訳案内士』(現在の正式名称は「全国通訳案内士」)だけでした。

その後、2018年1月に通訳案内士法が改正され、誰でも有償で通訳ガイドをすることができるようになるのですが、無資格者のガイドには、通訳をするための『語学力の不十分さ』とガイドとしての『ホスピタリティの不十分さ』という課題がありました。

そこで、高い英語力と日本の深い知識、そしてホスピタリティーを持った通訳案内士と外国人旅行客をマッチングさせるサイト『WOW U』を開設しました」

 

「地方のガイド」と「旅前の外国人旅行者」をマッチング

 

『WOW U』は、 訪日観光客と通訳案内士を含むJapan EXpertとのマッチングプラットフォームです。

※2019年6月、『WOW U』は、 訪日旅行客と日本を良く知るガイドのマッチングと、「明日何をしようか」と考えている旅行者が、日本全国の観光スポットやイベントなどを検索できるプラットフォームとしてリニューアルしました。

 

――中林氏

「『WOW U』の開設から3~4週間は、サイトの閲覧者はいるのに誰も購入しないという日が続きました。

そこでFacebook Messengerを設置したところ、1件のメッセージが入りました。

日本へ旅行に来る予定の外国人から、簡単な場所と日程の情報が送られてきたのです。

その情報をもとに、通訳案内士の協力でアクティビティを6つ提案すると、そのお客さんは全て買ってくれました。

後日談になりますが、メッセージで 『WOW Uが何のサイトか分からないし、いっぱいあるから選べなかった』との感想を送ってくれました。

よく分からないサイトでも、誰かからのレコメンド(おすすめや提案)があれば買ってもらえるという経験を経て、その後も旅行客からの様々な問い合わせに対応していました。

しかし一人で対応することが難しくなってきて、この「レコメンド」を自動化できないかと考えるようになったんですね。

この時の経験を経てできたのが、 Konomy AI travel consultant(Konomy) です」

 

360箇所以上の観光スポットから旅行者好みの穴場スポットをAIがレコメンド

 

「Konomy」は、AIが旅行者本人にとって適したツアーや体験プランを提案するサービスです。

旅行者は、利用者の感想や口コミなどの「レコメンド」が記載されたガイドブックや評価サイト、ツアーガイドの情報を参考にします。

しかし、この「レコメンド」は推薦者に依存し、属人的なため、個人の持つ知識や主観の中でしか提案ができないという限界がありました。

EXest社が提供する「Konomy」は、7 つの簡単な質問に答えるだけで、旅行者の属性と好みをAIがマッチングさせ適切なスポットのレコメンドを実現します。

現在「Konomy」が提案する観光スポットは、東京・大阪・京都など主要都市のほか、地方の穴場スポットも含めた約360ヶ所となっており、今後は2,000ヶ所まで増える予定です。

 

――中林氏

「Konomyのレコメンドには富士通が開発したZinrai(※2)が使われています。

Zinraiを選んだ理由は、データが少なくても利用を開始できることと、使い続けるとどんどん精度があがる自律学習型のシステムに魅力を感じたからです。

担当者からは、『Zinrai自体は完璧ではないので、属人的な情報や人の判断がないと最適なものは提供できない』と言われましたが、うちには通訳案内士がいます。

AIがレコメンドした後に旅行者とコミュニケーションを取ることが出来るので、Zinraiの導入に問題はないと考えました。

Zinraiを取り入れたサービスの開始に向けて、富士通のアクセラレータープログラム(※3)に応募し、1年ほどで「Konomy」をリリースすることが出来ました」

 

地方放送局と連携して動画コンテンツを提供してもらい、独自のデータベースを構築

 

 

――KonomyのAIはどのようなデータをもとにレコメンドしているのでしょうか。

――中林氏

「EXestでは、事業提携している全国50以上の放送局から、毎月150本〜200本の動画を提供してもらい、自社で運営するWebサイトで配信してユーザーの属性情報を取得しています。

例えば、ある桜の名所の動画コンテンツの裏側では、Webサイトにアクセスしている場所や登録内容などを通して、閲覧している人の国、年代、興味といったデータを集めています。

これをデータベース化して富士通に共有することで、出身や年代などに適した観光スポットやアクティビティをレコメンドすることが可能となります。

訪日前の人たちがどういう期待値をもっているかというデータベースは私たち独自のものだと考えています」

 

「Konomy」を使った新しい取り組みと今後の展望

 

――現在、Konomyを使った自治体向けの新しい取り組みがあるそうですね。

――中林氏

「はい。Konomyを自治体で活用する方法は2つあります。

1つめは『Konomy』を自治体のWebサイト上にバナーを設置して直接海外の観光客に使っていただき、自治体の中のおすすめの場所をレコメンドするサービス方法です。

2つめは、自治体の運営するサイトの裏側の仕組みとしてKonomyのアルゴリズムを活用し、ユーザーに対して最適な情報を表示することで滞在時間などを改善することに活用していただく方法です。

現在、様々な自治体と話を進める準備をしています」

 

――今後のKonomyの展望についてもお聞かせください。

――中林氏

「現在EXestでは、海外の旅行代理店向けにカスタマイズしたサービスを考えています。

海外の旅行代理店では、東京、大阪、京都などの主要都市、また富士山や箱根などの有名な観光スポットを紹介されることがほとんどです。

しかし、日本にはまだまだ知られていない穴場の観光地やスポットが全国にあります。

日本を訪れる旅行客がKonomyを使うことで、より深い日本を知るとともに、思わず『WOW(ワオ)』と言葉が出てしまうような、日本での体験や出会いが広がると良いなと思っています。

ただ、海外にサービスを展開する上で改善が必要な部分もあります。

現在のKonomyは、属性情報が国別で分かれているため、特定のエリア別に最適なレコメンドを提供することはできません。

今後は、データベースと機能を充実させ、『アメリカのKonomy』や『オーストラリアのKonom』を実現したいです」

 

出会えなかった人と人とを繋ぎ、WOWで溢れる世界を実現する

 

通常、KonomyのようなAIを活用したレコメンド機能のサービスは、データ収集だけでも相当の調査コストと時間がかかります。

しかし、日本全国50以上の放送局が持っているネットワークをフル活用できるという強みを持つEXestは、今後その機能をどんどん充実させ、訪日旅行者に新たな日本を見せてくれることでしょう。

EXestでは、海外の旅行客が、まだ知られていない観光スポットを知り、良きローカルガイドと出会い、想像以上の体験を得る「WOWで溢れる世界」の実現を目指しています。

「WOW」という言葉は、「自分の考え、想像を超える経験をしたときに出る言葉」です。

Konomyをはじめとする様々なサービスを通して、日本の色々な場所で「WOW」が溢れることを期待しています。

 

Konomyの詳細ページはこちら

 

参照

(※1)日本政府観光局(JNTO) 訪日外国人旅行者数、初の 3,000 万人突破! :
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/181219.pdf
(※2)Zinrai: https://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/ai/ai-zinrai/
(※3)富士通アクセラレータプログラム: https://www.fujitsu.com/jp/innovation/venture/

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