近年のAI・人工知能による画像認識技術は、いよいよ人間の知覚能力に迫るレベルまで高まってきています。
今回は、製造業のものづくり現場でのAIや画像認識技術の活用事例についてまとめました。
■製造大手JFEスチールとNEC、製鉄所内の安全管理業務に画像認識AI技術を活用
※画像は製鉄所内のイメージです。 JFTスチール社とは関係ありません。
製造大手JFEスチールとNECは、AIによる画像認識技術を製鉄所作業員の安全管理業務に活用する取り組みを開始しました。
近年、世代交代とともに業務経験の少ない若手作業員が増えており、安全管理を強化するにはAIが最適と判断したとのことです。
JFEスチール社の製鉄所内は場所によって照明条件が異なり、さまざまな装置が配置されていることに加えて、作業員もさまざまな姿勢で作業にあたることから、人物検知が難しい環境でした。
そこで、ディープラーニングによって大量の人物画像をAIに学習させ、実用レベルでの人物検知を実現させることで、条件によって立ち入りが制限される作業区域内でもAIが正しくエリアを認識できるようになったのです。
作業員の不正な立ち入りを検知した場合、AIが警告を発するとともに自動でラインを停止します。
こうしたAIによる安全管理はすでに、JFEスチールの知多製造所(愛知県)で導入され、効果が認められたことから、2019年には全社展開する予定となっています。
(参照:JFEスチール株式会社 国内業界初となるAI画像認識による安全行動サポート技術の導入について)
■ブリヂストンはタイヤの製造工程をAIで全自動化、生産量が2倍に
タイヤ大手のブリヂストンでは、日産2万本のタイヤをAIが生産する取り組みを始めています。
同社の彦根工場(滋賀県)では、ICT(情報通信技術)やAIを活用した新たな生産システム「EXAMATION(エクサメーション)」を導入し、乗用車用タイヤを中心に日産5万3,000本のタイヤを製造しています。
AIを活用した新たな生産システム「EXAMATION」は、タイヤの品質の決め手となる成形工程を完全自動化できるシステムで、ブリヂストンのタイヤ成形技術のノウハウを詰め込んだシステムです。
タイヤは、ゴムや鉄から5つのパーツを作り出し、それぞれを組み合わせて完成します。
この部材の組み合わせを担うのが成形工程です。
温度によって伸び縮みする性質を持つゴムは、生産条件によって伸縮し硬度も異なるため、品質を維持することも決して簡単ではありません。
従来、ゴムの品質管理は人の目で行っており、最適な位置で貼り付けるために常に1人の作業員がつききりで、2つの機械を行ったり来たりしながら生産しています。
数多くの工程をひとりでこなさなくてはならないため大量の人員が必要で、しかも全ての部材が成形工程に集まることから、生産のボトルネックになりやすいことが課題になっていました。
その点、AIを活用した新たな生産システム「EXAMATION」であれば、既存の生産工程をそのまま置き換えつつ、成形工程を全自動化することができます。成形工程や品質管理は、ビッグデータをもとにした知見により組み立てられたアルゴリズムが制御しているからです。
ブリヂストンによると、「EXAMATION」を導入したことによって生産量は2倍、品質は15%の向上が認められ、従業員教育に必要な時間も3分の1になったといいます。
今後も導入範囲を拡大し、2020年までに全体生産量の3~4割を「EXAMATION」が担う計画を立てているそうです。
(参照:ブリヂストン企業サイト ブリヂストン独自のモノづくりICTを搭載 最新鋭タイヤ成型システム「EXAMATION」を彦根工場に初導入)
■製造業は画像認識AIやICTで労働力を代替、国際競争に打ち勝つ
少子高齢化で国内の労働力人口が不足し、熟練した作業員が減少する中で、製造業はAIやICTといった技術革新によって労働力を代替する必要に迫られています。
とくに、中国など新興国の追い上げは激しく、海外拠点の人件費も高騰しており、単純に海外へ生産移転すれば低コストで製品が製造できるという時代ではなくなっています。また、海外移転による技術の流出も、ものづくり企業の脅威です。
製造業は今後、AIやICTを導入した「スマート工場」で生産コストの低下と品質向上を図り、グローバルレベルでの競争に打ち勝っていく必要があるでしょう。
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