工場をはじめとする製造現場の生産性を維持・向上させる上で、部品や製品の表面にある傷、欠陥を確認する作業は極めて重要なものになります。傷や欠陥に気付かぬまま出荷してしまった場合、後々大きなトラブルに発展してしまうからです。
そういったトラブルを未然に防ぐため、多くの企業では「外観検査」というものを導入しています。また、近年では外観検査を自動化する企業も多くなってきており、ますます注目度が増しているのです。
この外観検査とは具体的にどのような方法で行われているのでしょうか。また、どのような方法で「自動化」が図られているのでしょうか。
今回は、外観検査について詳しくご紹介していくとともに、高速画像処理を用いた外観検査の活用事例についてもご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
■外観検査とは
まずは「外観検査」というものについて詳しくみていきましょう。外観検査とは、一般的に「部品・製品の品質を維持するためにチェックする業務」のことを指します。主にチェックしていくのは、部品(製品)の汚れや異物混入の有無、傷、欠け、変形といった点です。多くの企業では、これらのチェックを目視で行っていく傾向にあり、ルーペや顕微鏡なども活用しながら細かな傷などもチェックしていきます。
そんな外観検査はいくつかの種類に分けることができますので、項目ごとに検査内容をみていきましょう。
・製作段階での外観検査
本来の仕様と異なる部分がないか、形状や組み合わせの形などをチェックしていきます。また、図面寸法とも差がないか、変色や色ムラがないか、印刷文字の位置が適切かなどをチェックしていきます。
・表面処理後の外観検査
表面の感触に違和感がないか、また製品によってはシワや曇りがないかチェックしたりします。それに加え、表面の傷や汚れ、異物の付着なども確認していきます。
・製品組み立て後の外観検査
仕上がりの程度を確認したり、欠けている部分がないかをチェックしたりします。
主に上記のような分類ができるわけですが、こういった形で外観検査を行う目的は、「部品(製品)の不良品が出ないようにすること」に他なりません。不良品を出荷してしまった場合、当然その不良品が購入される可能性があります。その購入者が不良品であることに気付けば、企業としてのブランディング低下を招きかねません。それ以上に、部品(製品)の不良が原因で重大な事故を招いてしまう可能性もあるのです。そのような事態を未然に防ぐためにも、製造段階での外観検査は極めて重要になります。
とはいえ、目視での外観検査では不良を100%見抜くことができるとは限りません。一人ひとりの経験値によって左右される部分もありますし、場合によっては体調が影響を与える可能性もあるでしょう。そのため、最近では目視による外観検査だけでなく、カメラを用いた外観検査を導入する企業が多くなってきているのです。
■外観検査自動化と従来の外観検査との違い
近年は、カメラを用いて外観検査の自動化を図るための「画像処理システム」を導入する企業も多くなってきています。このシステムを導入することで、検査の精度を高めると同時に、「業務効率化」を実現するケースが多くなってきているのです。
そんな画像処理システムのメリットとしては、やはり個人差によるヒューマンエラーを防ぐことができる点が挙げられるでしょう。数多く生産している部品(製品)をすべて目視で検査していくのは決して簡単なものではありませんし、手間もかかります。特に、細かい傷や汚れなどは見落としてしまう可能性も高く、その見落としを防ぐためにわざわざ顕微鏡を用いて検査を行うという事例もあったわけです。
もちろん、顕微鏡を活用すれば微細な傷や汚れを見落としてしまうリスクも軽減できますが、その分作業効率は落ちてしまうため、「生産性」という側面で考えた場合、決して合理的な方法とはいえませんでした。
その点、画像処理システムを活用すれば、高解像度の画像を撮影可能なカメラで部品(製品)を撮影し、微細な傷や汚れ、異物などを検出していくことができるわけです。最近では31万画素の画像センサを搭載したモデルから2100万画素の画像センサを搭載したモデルまで、用途に合わせた選び方ができる画像処理システムを提供している企業もあります。
ちなみに、2,100万画素の画像センサを搭載した画像処理システムを活用した場合、目視では発見が極めて困難な「0.037mm」の傷や異物まで検査することが可能です。より高い精度で外観検査を行っていく上では、こういった高品質な画像処理システムの活用が必要不可欠といっても過言ではありません。
とはいえ、カメラを用いた外観検査もメリットばかりというわけではありません。当然、こういった高精度のシステムを導入するにはコストがかかりますので、予算が限られている企業などにとってはデメリットといえるでしょう。ただ、先ほどもご紹介したように、最近では用途に合わせて画素数を選択できるシステムを提供している企業もありますので、少しずつ導入のハードルも下がりつつある状況です。
●専門検査装置との違い
画像処理システムと似た装置として、専門検査装置というものも存在します。これらは、どちらも外観検査を自動化できるという点においては同じですが、それぞれ異なるメリット・デメリットがあるため注意が必要です。
基本的に専門検査装置は、検査に特化した装置であるため、外観検査に必要な機能はすべて備えています。ただし、高額で汎用性が低いというデメリットがあるため、予算が限られている企業にとっては導入するのが難しい可能性もあるでしょう。
一方の画像センサを搭載したシステムは、部品や製品の変更も自由に行えるため、汎用性が高いというメリットがあります。そのため、ライン設計が変更になった場合でも柔軟に対応可能です。それぞれ異なるメリットがありますので、しっかりと特徴を踏まえた上で導入を検討していったほうが良いでしょう。
これまで当たり前のように行われていた目視による外観検査も、カメラによる高精度な検査が主流になりつつあります。より高い精度で検査を行っていきたい場合には、カメラによる外観検査の仕組みを導入するのが有効といえるでしょう。
■外観検査基準書の作成
画像処理システムを用いた外観検査であれば自動化を図れることがお分かりいただけたかと思いますが、必ずしもすべての外観検査を自動化できるというわけではありません。中には、自動化するのが難しい外観検査項目も存在するからです。そのため、外観検査を行う際には、「自動化を図れる項目」と「人による外観検査が必要な項目」に分類した上で、人による検査結果のバラつきを防ぐための「外観検査基準書」を作成することが大切になります。
まずは、自動化が難しい外観検査項目から詳しくみていきましょう。
●自動化が難しい外観検査項目
・色味
製品表面の色味の違いは定量化するのが難しい傾向にあるため、自動化するのも難しい項目となります。特に、切削油を除去するために行う洗浄工程の後に発生する水シミや、銅基盤の酸化などは、定量化が難しいでしょう。これらは画像処理システムを用いた定量化が難しいので、人による外観検査を行うのが一般的な項目となります。
・キズ
製品の表面に入るキズは、状況によっては定量化が難しいものになります。たとえば、「部品を切削して製造する際の切削痕(ツールマーク)に関しては良品と判定するものの、切削痕と異なるキズに関しては不良としたい」といった場合、画像処理システムによって判別するハードルは上がってしまうわけです。このような場合には、画像処理システムではなく「人による外観検査」で不良となるキズの判別を行っていくことになります。
・異物
異物の大きさや、異物が付着する場所などを予測するのが難しい場合、画像処理システムによって定量化するのは難しいでしょう。特に、表面にさまざまなパターンが存在する製品の場合、異物の種類や付着箇所次第では正常とみなされてしまう可能性もあります。そのため、この異物検出という部分も、人による外観検査に頼ることが多くなるでしょう。
●外観検査の手順書
上記の項目などは、人による外観検査が必要になることがお分かりいただけたかと思いますが、人による外観検査を行う際には、検査結果のバラつきを防ぐための「外観検査基準書」を作成することが大切になります。その外観検査基準書を作成する際は、どのような構成にすれば良いのか、詳しくみていきましょう。
1.検査項目の定義
まずは、検査項目を定義する必要があります。検査項目を決める際の観点としては、「製品の機能」「顧客要求」「法規制」「工程能力」などが挙げられるでしょう。これらの観点から、どのような状態になっているときに不良と定めるのかを決めていくわけです。
2.外観検査の方法
次に、各検査項目をどのような方法で検査するのか、定めていきます。外観検査基準書には、「検査の頻度」「検査サンプリング数」「測定器」などを記載しておくと良いでしょう。
3.検査担当者
検査に技能が求められる場合には、検査員を認定制にする必要があります。そのため、外観検査基準書には「検査員の役職」「資格」など、必要となる要素を記載しておくと良いでしょう。
4.管理方法
定量化することができない項目は、計数値を管理するタイプの管理図を用いて品質管理を行います。この管理図には、「c管理図」「u管理図」「np管理図」「p管理図」という4つの種類が存在するため、外観検査基準書には使用する管理図の種類を記載しておく必要があるでしょう。
ちなみに使用する管理図の種類は、「管理したいのは不適合数か不適合品数か」「サンプルの大きさを一定にできるかどうか」の2点で決まります。不適合数とは、1つの製品に対して、あるモードの不良となる箇所が何個あるかをカウントした値のこと。不適合品数とは、不良となる箇所を含む製品の数のことです。
5.不良時の処置方法
不良品が発生した場合にどのような処置をとるか、具体的な手順を記載します。手直しできるかどうか、不良品の分析は必要なのか、保管する必要はあるのか、といった判断基準の詳細を記載しておくと良いでしょう。
■高速画像処理の活用
最近では、より検査のレベルを高めることができる「高速画像処理」という技術を導入している企業も少なくありません。この高速画像処理とは、従来の画像処理から約33倍以上の処理を可能にする技術のことです。
従来の画像処理では、1秒間に約30枚の静止画像を撮影することができます。一方の高速画像処理は、1秒間に約1000枚の静止画を撮影することができるため、高速の移動体をリアルタイムに認識し、フィードバックできるのです。そのため、「検査のレベルを高めて品質価値を高めたい」「ラインを高速化させて生産性向上を図りたい」といった課題を持つ企業に多く導入され始めています。
そんな高速画像処理技術ですが、実際に導入した場合にはどのようなメリットが得られるのでしょうか。高速画像処理技術のメリットについて、より詳しくみていきましょう。
●高速画像処理技術を活用するメリット
特に大きなメリットとして挙げられるのは、やはり「生産性を高められる」という点でしょう。高速画像処理技術を活用した場合、システムの物理的な限界を突破することができるため、繊細な検査をよりスピーディーに行えるようになるのです。検査の精度を落とすことなく、スピードを高められるという点は、大きな魅力といえます。
また、ロボットに作業を教えるティーチング作業も、これまでの画像処理技術では難易度が高く、多くの時間を必要としていました。しかし、高速画像処理によって手間のかかる作業を自動化させることにより、より補正の質を高めることができ、業務効率化につなげられるのです。業務効率化をスムーズに行えるという点も、大きなメリットといえるでしょう。
●高速画像処理技術を活用した製品の例
実際に高速画像処理技術を活用した製品の例もみていきましょう。
・食品工場の検査工程
ある食品工場では、異物混入や梱包不良といった検査を目視で行っており、生産性の向上という部分で課題を抱えていました。また、育成や人件費といったコストも大きな課題となっていたそうです。
そこで高速画像処理技術を導入したところ、これまで人の目に頼ってきた従来の検査工程を自動化させることができるようになったといいます。その結果、以前よりもスピーディーな検査が可能になり、工場全体の生産性も向上させることができたそうです。
・ピッキング作業の自動化
ある企業では、手作業で行うことが多かったピッキング作業において、高速画像処理技術を導入したところ、自動化と効率化の両面で大きなメリットを得られたといいます。効率化を図ることで、同時に行える作業の数も多くなるため、工場全体の生産性向上につながっていくのです。
■画像処理の技術による外観検査の事例
画像処理の技術を用いた外観検査は、さまざまな業界で導入され始めています。ここからは、画像処理技術を用いた外観検査の導入事例をご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
事例①:食品業界
(参照:アサヒビールとNEC、「輸入ワイン中味自動検査機」を共同開発 (2019年5月17日): プレスリリース | NEC)
アサヒビールは2019年5月、NECと共同で画像認識技術を用いた輸入ワインの中味自動検査機を開発したと明らかにしました。
これまで輸入ワインの検査作業は、検査員の目視で行われてきました。瓶を光に透かし、液体に微細な異物が混入していないかをラベルの隙間からチェックするという、繊細かつ熟練した作業が求められます。そのため、現在の輸入ワインの販売数量を検査するのに1ラインあたり10人ほどの検査員が必要とされるといいます。
今回アサヒビールとNECが開発した輸入ワインの中味自動検査機は、現在の検査基準を維持しつつも画像処理技術を活用し、より検査の効率化を図るというものです。
同検査機では、画像認識システムのほか、赤外光照明やカメラも用いて検査を行います。ワインを検査機にかけると、約10秒間瓶が傾斜・旋回します。すると液体に緩やかな渦流が発生し、ラベルに隠れて見えなかったわずかな異物も発見できるというものです。
ワイン瓶のさまざまな形状や、赤ワイン・白ワインなどの液色の違いのデータをあらかじめ登録しておくことで、最適な検査パターンを適用できます。
2019年2月1日に日欧EPAが発効し、欧州連合(EU)産ワインの関税が撤廃されました。そのことで今後ますますワインの輸入量は拡大 し、同時に輸入ワインの中味検査の需要も高まると考えられます。一方で、今後労働力不足が見込まれていることから、検品作業の効率化や作業員のスキルの均一化が求められると予想されます。この輸入ワインの中味自動検査機はこうしたニーズを満たす製品として、今後国内各地の輸入倉庫に導入される計画となっています。
事例②:食品業界(キューピー)
(参照:AIを活用した原料検査装置をグループに展開 | ニュースリリース | キユーピー)
食品メーカー大手キユーピーでは、「1日100万個以上のポテトをさばく検査ロボット」を導入したことで話題を集めています。
同社では、離乳食の材料として1日100万個以上のダイス型(角切り)ポテトを使用しています。ただ、中には茶色く変色したポテトが混じっていることもあるそうです。変色しているだけで食べても人体には問題のない品質のものですが、離乳食という商品の性質上、少しでも購入者の不安を取り除かなければなりません。また、その他にもポテトの品質は必ずしも均一ではなく、また品種も数多くあるため、原料の検査作業はなかなか機械化できない分野でした。これまでは、目視による検査員への負担も大きかったといいます。
そこで同社では、マシーンラーニングを活用したAIによる検査プログラムを製造工程に導入。当初は「不良品を見つけ出す」というフローで取り組んだところうまくいかなかったため、発想を逆転させて、マシンに良品のダイズポテトの画像を学習させて「良品を見つけ出す」というフローに変更したところ、不良品の選別に成功したのです。
人間による目視では疲労の蓄積によって検査効率が下がっていきますが、機械ならそういったことはありません。実質的に検査速度を2倍に向上させることが可能だといい、同社では今後、離乳食の製造ラインだけでなく、ポテトサラダの製造工程にも同様のマシンを導入する計画です。
事例③:建設業界
(参照:清水建設、鉄筋継手の外観検査に画像認識AIを導入、5分の目視検査を20~30秒に短縮 | IT Leaders)
建設業界においても外観検査は積極的に活用され始めています。その一例としては、清水建設が導入した画像認識AIが挙げられるでしょう。清水建設では、ガス圧接継手の施工現場において画像認識AIをトライアル導入し、その認識率や使い勝手を検証する取り組みが行われました。
トライアル期間は2020年1月~2020年3月の3ヶ月間で、清水建設が施工しているビルの現場において、スマートフォンを利用して鉄筋継手の画像を撮影し、画像認識AIによって外観検査が行われたそうです。これまで目視で行われていた検査と比較することで、判定結果の精度、作業時間、画面操作性などを検証するわけですが、これまでの目視検査では1カ所あたり5分程度を要していたといいます。
一方、画像認識AIを活用すれば、1カ所あたり20秒から30秒程度で検査を行うことが可能です。また、スマートフォンのアプリを立ち上げ、鉄筋のサイズ(径)を指定し、撮影ガイドに合わせて撮影するだけという手軽さもあるため、今後画像認識AIの活用は建設業界でも進んでいくのではないでしょうか。
事例④:化粧品業界
(参照:Optune | 資生堂オフィシャルサイト)
外観検査とは少し異なりますが、化粧品業界でも「画像処理AI」を活用した事例は多く存在します。その一例として挙げられるのが、資生堂が提供する「Optune」という製品です。この「Optune」という製品では、AI・人工知能が自分の肌コンディションに最適な美容液の配合を行ってくれるという特徴的な機能が備えられています。美容液の配合を行うためには、「Optune App」というスマホアプリと、「Optune Zero」というマシンが必要です。
使い方としては、まず「Optune App」をダウンロードし、起動して肌の写真を撮影します。次に、「Optune Zero」をWi-Fiに接続し、クラウドサーバーに接続します。そして、肌の水分量やキメといったコンディションを診断した後、気温や湿度、紫外線量といった外的要因加味した上で、最適な美容液の配合が行われ、抽出されるという仕組みです。
当然、肌のコンディションは日によって異なりますし、気温や湿度なども毎日異なりますので、毎日最適な美容液の配合を行ってくれるというのは非常に魅力的な機能といえるのではないでしょうか。
ちなみに、「Optune Zero」に入れておく化粧水や乳液は、最初に測定した肌の画像をもとに選んでくれる仕組みになっていますが、最新の肌の調子に合わせて美容液や乳液を買い足していくことも可能です。そのため、一度購入した美容液が肌に合わず失敗してしまったという経験をお持ちの方でも、安心して利用することができるのではないでしょうか。
事例⑤:物流業界
物流には、物を移動させる業務だけでなく、そのプロセスとなる包装や保管といった業務も含まれます。そのため、倉庫への入庫作業なども物流に該当するわけです。
その倉庫への入庫作業においては、これまで人の目で商品のパッケージやタグなどを確認しなければなりませんでした。そして、その商品名や型番などを倉庫管理システムに入力する作業も、人が行わなければならなかったわけです。
しかし、最近ではAIの画像認識技術を活用したシステムが積極的に導入され始めており、この一連の業務の大幅な効率化を実現できるようになりました。具体的には、人間による目視とシステム入力作業を自動化させることで、検品業務を半分以下の時間で実施できるようになったのです。
また、倉庫や物流センターでは、出荷する荷物や商品の仕分けなども日々行われているわけですが、場所によっては荷物の種類が多岐に渡るケースも少なくありません。そのような倉庫では仕分け作業が複雑化するため、どうしても人の手で仕分けを行わなければならない状況でした。
しかし、最近では画像認識技術とディープラーニングを活用する企業も増えてきており、複雑な仕分け作業も自動化させることができるようになっています。
事例⑥:小売業界
(参照:IT Leaders 日立ソリューションズ、画像認識で外観検査を自動化するSIサービス)
日立ソリューションズでは、マシーンラーニングによる画像認識技術で製品の外観検査を自動化するSIサービスを提供しています。このサービスはもともと製造業向けに開発されたものですが、小売業の現場での活用も期待されています。
日立ソリューションズのSIサービスでは、製造業企業が作業者のスキルに依存することなく外観検査や画像処理業務が行えるようになり、作業員不足やスキルのばらつきといった課題を解決することができます。
同社がSIサービスを導入した背景には、近年の少子高齢化に伴う人手不足や、熟練工の技術継承が深刻化しているという課題がありました。特に目視で行う検査に関しては一人ひとりの経験やスキルに依存しなければならないため、経験が浅い担当者による検査から品質のばらつきが生まれたり、不良品が流出したりといった問題が懸念されていたのです。
そんなSIサービスですが、製造工程の検品・検査作業では以下のような利用方法が考えられます。
<精密機器部品の外観検査>
部品のキズや汚れ、形状不良などを判別し、高精度の外観検査を行う。マシーンラーニングで異常パターンごとに最適な分析方法を採用。製造作業員のスキルに依存せずとも検査・検品工程の品質均一化や作業効率向上を目指す。
<保守点検業務の効率化>
稼働中の製造機器が正常に動作しているか、各種ライトの点灯状態やスイッチのオンオフ状態などを判定する。機器の作動状況の判別が自動化される。
<品番チェックの自動化>
コンテナや荷物に記された文字やマーク、品番の画像と製造出荷データと照会し、検品作業・照合作業の工数を低減する。検品作業のチェック漏れも防止できる。
SIサービスでは上記のような利用方法が考えられるため、小売業の現場においても「過去の商品陳列画像と店舗の売り上げデータを照合し、最適な商品陳列方法を提案する」といった使い方ができるのです。
事例⑦:自動車業界
自動車製造においても画像処理AIは積極的に活用されています。例えば自動車メーカーのアウディでは、AIを活用することで工場内の量産体制を整えているそうです。ここで活用されているのは機械学習で、プレス加工を行う際に発生する金属板の割れ目や傷などを自動で認識することができるというもの。
これまでは目視でチェックを行う必要があったため、手間がかかるだけでなく人件費も発生するため、決して効率的とはいえませんでした。しかし、画像処理AIを活用することで、人件費の削減はもちろんのこと、より性格かつスピーディーにチェックを行えるようになったのです。そのため、今後はより多くの業務にAIが導入される予定だといいます。
また、近年は自動車がより複雑で自由なデザインになってきており、必然的に求められる品質基準も高まりつつあるそうです。そのため、アウディではプレス工場において加工された部品すべてをその場で検査するようにしています。
当然、その場ですべての部品を検査するためには手間がかかるわけですが、機械学習を活用することによって、それらの業務を大幅に効率化することができるようになったそうです。
■外観検査のおすすめ記事紹介
最近では、外観検査におけるデータ分析を支援する企業や、特徴的な機能を備えたAI外観検査ソリューションを提供する企業なども多くなってきています。以下の記事では、それらの企業の詳細や、利用するメリットなどを詳しくご紹介していますので、ぜひこちらも併せてご覧になってみてください。
外観検査のおすすめ記事①
外観検査にAIを導入することで得られるメリットとは?
外観検査のおすすめ記事②
目視での外観検査を効率化させるAIの仕組みとは?
■外観検査の展望
今回は、外観検査の種類や自動化のメリット、外観検査基準書の作成方法などを詳しくご紹介しました。活用事例でもご紹介したように、最近ではさまざまな業界で画像処理技術による外観検査が導入され始めています。
今後は少子高齢化に伴い、人手不足がさらに深刻化していくことが予想されますので、外観検査の自動化によって生産性を高めるという選択は非常に効果的なものといえるのではないでしょうか。AIの技術は現在も進歩し続けていますので、外観検査の精度もさらに向上されていくことが期待されます。
外観検査の自動化によって企業全体の生産性を向上するためにも、ぜひこの機会に高速画像処理やディープラーニングといった外観検査に関わる技術の知識を深めてみてはいかがでしょうか。