第3次AIブームといわれる現代において、多くの業界がAIを導入し始めています。そしてそれは、音楽業界も例外ではありません。近年は、音楽業界においてもAIが積極的に活用され始めており、特に「作曲」という分野でAIが存在感を増している状況なのです。
今回は、昨今注目を集めている「自動作曲AIソフト」の仕組みや特徴に加え、代表的な自動作曲AIソフトを紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
■作詞、作曲など、さまざまな形で活用され始めているAIの仕組み
音楽業界における作詞、作曲といったものに対して、「人間の感性が重要視される領域であるためAIが介入するのは難しいのではないか」といった印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。しかし、近年はAIの技術が発達したことにより、作詞や作曲の一部をAIが担うことも可能になってきているのです。
そもそも、作曲には「スケール(調)」「コード(和音)」「メロディ(旋律)」という3つの重要な要素があります。そして、現代ではこの3つの要素に加えて「ジャンル」「サウンド」という2つの要素があり、主に5つの要素によって成り立っているわけです。
これまで、人間が作曲を行う場合は、初めに音楽理論を頭で把握し、曲のコンセプトを決定する作業から進められていました。その次に、曲調を決めた上でコード進行を決定していくわけです。そして、そのコードにメロディ、サウンドを加えることによって、初めてひとつの曲が完成することになります。
一方、AIが自動作曲を行う場合は、まず初めに大量の譜面をAIに学習させていくところから始まります。学習させることで、コードのパターンをAIに記憶させるわけです。そして、曲調のような一定の指示をAIに出すことによって、AIは学習したデータをもとに作曲作業を行っていきます。基本的に、作りたい曲のコンセプトさえ定まっていれば、AIは作曲の3要素の「スケール」「コード」「メロディ」を網羅することができてしまうのです。
このように言われると、既にAIだけで楽曲制作を行える状況が生まれているように思えるかもしれませんが、人間よりもAIが優れているとは言い切れません。先ほどご紹介したように、現状では「AIに譜面のパターンを学習させる」という作業が大前提として必要であり、そのパターンをもとにした楽曲しか作ることはできないからです。
そのため、一流の作曲家が行っているような、「これまでにない独創的な音楽を創り上げる」といった作業を、AIだけの力で実現するのは難しいと言わざるを得ないでしょう。むしろ、自動作曲された曲のメロディが単調になってしまうケースも少なくないため、まだまだ改善の余地がある分野といえるかもしれません。
■自動作曲するAIソフト6選
最近は、自動作曲を行えるAIソフトも多くなってきています。ここからは、いくつか代表的な自動作曲AIソフトの機能や特徴などを詳しく見ていきましょう。
・Amper Music
(参照:AI Music Composition Tools for Content Creators | Amper Music)
Amper Musicは、無料アカウントを作成するだけで、AIが自動作曲を行ってくれるAIソフトです。使い方としては、まず作曲したい曲のジャンルを選択し、曲の雰囲気や長さなど、細かい指示を行っていきます。それらの指示を終えれば、あとはAIが学習したデータを参考にして、指示に沿った楽曲を自動で作ってくれるという仕組みです。作成された楽曲はフリーで使用することができるという点は大きなメリットのひとつといえるでしょう。
ちなみに、Amper Musicには有料のPro版も設けられており、こちらはユーザーが編曲を行える機能が備わっています。また、曲中で使用する楽器の指定なども行うことができるので、より本格的にAI自動作曲を活用していきたい場合におすすめです。
・Ecrett Music
(参照:Easy way to create royalty free music – ecrett music)
Ecrett Musicは、直感的なインターフェースを備えている使い勝手の良いAI作曲サイトです。さまざまな機能や特殊効果が備わっている点は大きな特徴といえるでしょう。「旅行」「冒険」「ファッション」といったシーンを選んだり、「テクノ」「ヒップホップ」といったジャンルを選んだりすることもできるため、イメージに近い楽曲を作りやすいサイトといえるでしょう。
こちらも無料で利用することができますが、より本格的に利用したい場合には、音楽の商用利用が可能になる有料版(Individual)がおすすめです。
・Amadeus Code
(参照:Amadeus Code – artificial intelligence powered songwriting assistant)
Amadeus Codeは、スマホで手軽に作曲を行うことができるAI搭載型のアプリです。AIが学習するコードは毎日更新されるため、常に新しい曲と出会うことができます。
そんなAmadeus codeは使い方もシンプルで、はじめにビートのパターンを指定し、ベースとなる楽曲の選択を行います。このシンプルな操作だけでAIが自動でメロディを作曲してくれるので、簡単なメロディを作成したい場合などにおすすめです。
・Humtap
(参照:Humtapオフィシャルサイト)
Humtapは、迅速かつ簡単に音楽を制作することができるAI搭載型のアプリです。ユーザーが生声でハミングするだけで、AIがさまざまな楽曲を使用しながら作曲していきます。ボーカルを追加したり、スマホの画像やビデオをアップロードして音楽を追加したりすることもできるため、より多様なスタイルで作曲を行うことができるでしょう。
・AIVA
(参照:AIVA – The AI composing emotional soundtrack music)
AIVAは、広告や映画などの音楽を制作した経験があるAIVA Technologies社が提供しているAI作曲ツールです。非営利目的であれば、作曲した楽曲を自由に使うことができるため、趣味の範囲で音楽を制作したい場合などに有効活用できるツールといえるでしょう。
無料版でも問題なく使用することができますが、有料版にアップグレードすると、より専門的な機能を多く利用することができるようになります。
・Computoser
(参照:Computoser – unique, computer-generated music)
Computoserは、伴奏やドラム、楽器などの組み合わせによってオリジナルの楽曲を作成することができるAI作曲サイトです。分かりやすいインターフェースなので、初めて利用する形でも手軽に作曲を行うことができます。また、生成された音楽に関しては、再生後に「Good」「Bad」のいずれかで評価することができ、この評価がAIのアルゴリズム改善につながっていくそうです。
■AI・人工知能が作曲をサポートする存在に
今回は、自動作曲を行うAIについて詳しくご紹介しました。AIが人間のように独創的な音楽を作曲するのはまだ難しいと言わざるを得ませんが、過去のデータを参考にして作曲を行うこと自体は可能になっています。
そのため、作曲をサポートする存在としてAIが重宝されるようになる可能性は十分に考えられるのではないでしょうか。また、AIの技術は今後さらに発展していくことが予想されますので、どのような形でAIが音楽業界に貢献していくのか、ますます目が離せません。